亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
重ねられた唇の柔らかさや、心地良い暖かさ………。
………何も考えられない。
……ただ、触れているだけなのに。
なのに何故………。
………こんなにも、胸が高鳴るのか。
…心臓とはこんなにも大きかったか?こんなにも大きな存在だったか?
こんな近くに……密着していて………鼓動音が聞こえやしないだろうか。
……………どうして動けないんだろう。
………力が抜けて……。
立ち込める濃霧の様に、次第に真っ白になっていく、頭の中。
重ねられていた唇が不意に離れたかと思いきや、少し角度を変えて、また重ねられた。
………無意識で息を止めてしまい、だんだんと息苦しくなってきた。
「…………ん……」
グッと軽く胸板を押すと、気付いたのか、キーツは少し名残惜しそうに唇を離した。
新鮮な酸素を吸い、詰まっていた呼吸を整える。感じる息苦しさは何処か心地良く、自然と瞳が涙で潤む。
歪んだ視界に、自分と同じ位赤らんだ切ない表情のキーツが映っている。
彼の目には、何処か怯えている様な、やけに小さく見える自分がいた。
そしてその視線は、外される気配が無い。
………成す術も無い……抵抗する事などとうに忘れてしまったローアンは、腰に回された力強い腕に、更にグッと引き寄せられた。
互いの息が掛かる程の至近距離。
もはや高鳴る鼓動音しか聞こえない中、 消えてしまいそうな小さな声でキーツは言った。
「―――……好きだ」
ビクリと、身体が震えた。
「………好きだ……ローアン……………ローアン………」