亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~

重ねられた唇の柔らかさや、心地良い暖かさ………。


………何も考えられない。




……ただ、触れているだけなのに。
なのに何故………。


………こんなにも、胸が高鳴るのか。
…心臓とはこんなにも大きかったか?こんなにも大きな存在だったか?
こんな近くに……密着していて………鼓動音が聞こえやしないだろうか。





……………どうして動けないんだろう。


………力が抜けて……。









立ち込める濃霧の様に、次第に真っ白になっていく、頭の中。



重ねられていた唇が不意に離れたかと思いきや、少し角度を変えて、また重ねられた。



………無意識で息を止めてしまい、だんだんと息苦しくなってきた。

「…………ん……」

グッと軽く胸板を押すと、気付いたのか、キーツは少し名残惜しそうに唇を離した。

新鮮な酸素を吸い、詰まっていた呼吸を整える。感じる息苦しさは何処か心地良く、自然と瞳が涙で潤む。


歪んだ視界に、自分と同じ位赤らんだ切ない表情のキーツが映っている。
彼の目には、何処か怯えている様な、やけに小さく見える自分がいた。
そしてその視線は、外される気配が無い。


………成す術も無い……抵抗する事などとうに忘れてしまったローアンは、腰に回された力強い腕に、更にグッと引き寄せられた。

互いの息が掛かる程の至近距離。
もはや高鳴る鼓動音しか聞こえない中、 消えてしまいそうな小さな声でキーツは言った。









「―――……好きだ」


ビクリと、身体が震えた。
















「………好きだ……ローアン……………ローアン………」



< 874 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop