亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
王族、王族、王族………。

………聞き飽きた。………うんざりだ!!


「………その、偉大なる血統に………私は…縛られねばならないのか…?………反吐が出る……!………王族で無ければ、剣をとっても良いのか!!一兵士として戦えるのか!!」

肩を震わせ、握り締めた拳に力を込めた。

………この怒りは何処に向けられている?少なくとも、キーツに向けるべきではない。私自身だ。……分かってはいても………誰かにぶつけずにはいられなかった。

「………私は、私が嫌いだ!!一番、嫌いだ!!………守られてばかりの私が………嫌いだ。………………………………………何も出来ずに震えていた…あの夜の自分が……」

「………」

あの夜。

それを聞いて、キーツは本の少しだけピクリと動いた。



「………もう嫌だ…………私を取り巻く色んなものが壊れていくのは………嫌なんだ…。……………生まれながらに持ってしまったこの王族の血のために………血を流していく。…………私の……私の血は、そこには無い!!………傷一つ無く守られている自分が……………憎い!!」


握り拳を思い切り壁に打ち付けた。

壁に掛けられた古い絵が、カタカタと揺れた。





…ギュッと唇を結び、怒りで小刻みに震える細い肩。
今にも泣き出しそうな潤んだ瞳は、溢れそうな涙を必死に堪えている様だった。









ローアンにとって………あの神々しい城は………。





………暖かい居場所で、唯一の帰れる家で………。


…………大き過ぎる、重荷でもあったのだ。



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