亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
人をつき動かすのは、使命感や忠誠心ではない。
自我を支配する、感情そのものなのだ。
「――………俺は………弱いんだ。………………………また……君を守れないかもしれない……。また………………俺だけが残るんじゃないかって………。……………怖いんだ…。………今度こそ……守り…たいのに………………………っ…………………無力な自分の残影が……離れないんだ……!」
肩を震わせて俯くキーツ。
………そんなことない。
「………弱くなんかない……」
ローアンは小さな声で言った。
「…………自分をそうやって見つめられるのは………強い証拠だ。……………」
………この人は…………ずっと…………苦しんでいたのか。
………何もかも忘れてしまった私の代わりに……………悲しんでくれていたのか。……………耐えてくれていたのか。
……………同じ時を同じ様に………。
………そして私なんかを………今も………守ってくれようとしている。
「……………死んだと思っていた君が…………生きていて…………………………俺は…………………………本当に嬉しかったんだ……。…………ローアン…………また守れないのは………嫌なんだ……………もうこれ以上………君を………」
「………」
切ない感情が、その言葉一つ一つから伝わって来る。
…………まるで長い告白を聞いている様で……。
……………胸が熱い。
キーツは俯いたまま、そっと……重ねたローアンの手に指を絡めた。
………大きな…暖かい手だった。少しぎこちない動きで…彼の指が割り込む。