亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
垂れた髪の間から見える表情は真剣そのものだが………赤らんでいた。
耳や首筋が真っ赤だ。
どうして彼は、こんなにも一生懸命になってくれるのだろうか。
どうして……。
「……………私一人に………そんな……価値なんか………」
声をくぐもらせて呟くローアンを、キーツは空いているもう片方の腕で抱き寄せた。
………その温もりは、冷えていた身体にはとても心地良かった。
………密着しているため……彼の早い鼓動が微かに聞こえた。
………見上げた先の彼の顔は、更に赤くなっていた。
「……………何度も………言わせるな………。……………………………………好き……だから……………………………自分でもどうしようも無い位………君が………好きだから………」
「………」
……………
……………分かった気がする。
………私が何故……………この人を………。
…………涙が、溢れた。
…気付かれない様にキーツの胸に顔を埋め………絡んだ指を、握り返した。
「…………ローアン…?」
俯いたままで何だか様子がおかしい。
少し気になって顔を覗き込もうとした。
―――が、その瞬間………。
「―――…キーツ…」
………震えた、か細い声で名前を呼ばれ…………ざわりと胸の辺りがざわついた。
………か細い身体が、更に距離を縮めようと、キーツに寄り添ってきた。
「―――……好き…私も」