亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
………もしかしたら、二度と会えないかもしれない。
二度と、その姿を見れないかもしれない。
………しかし、これは………………戦争なのだ。
………慈悲の欠片も容赦も無い、残酷な舞台なのだ。
「…………お互いのためだ。………会えば…………苦しいだけだ」
「………逆に苦しくねぇか?」
「………………いいや。………伝えたい事は……全部言ったさ」
何度も………言った。声が掠れようとも、嗄れようとも………言った。
囁いた。
………伝えた。
だから、いい。
会えなくても。
少し寂しいだけだから。
「……国家再興が叶ったら………玉座は誰が座る?……嬢ちゃんは守人に断固拒否したらしいぜ。………俺かお前だとさ。………俺は嫌だね」
王位継承権を持つ人間の順番から見れば、玉座はオーウェンが座るべきなのだが……。それをさらりと断る…否、嫌がるオーウェン。
「………嫌って…」
呆れた顔を向けて来るキーツに、オーウェンは不快そうに眉をひそめた。
「………昔も同じ事言ったがな…。…………俺は向いてねぇんだよ………そういうのは。…………だ・か・ら、お前やれ。お前の方が適任だろ。きっと天職だぜ」
天職……。
自由を好む風の様な男だ。………いや、ただただ流される雲か。
「………王になるには創造神アレスの許しがいるんだぞ……。……俺は王族の血筋ではないし……」
「神様もその辺は臨機応変に対処してくれるだろうよ。歴代の王にもその血統じゃねぇ人間が数人いたさ。後継ぎ問題とかで仕方無くな」
だから、お前がなれ。
困り顔のキーツの肩をオーウェンは叩いた。