亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
クライブが不気味な音が漏れる背中のえらを、指先でそっと撫でると、裂けた口から黒板を引っ掻いた様な不快な鳴き声が生じた。


「………………古代の魔獣…オルカだ。………………風に変化して移動する………………………………呼んだのは………何百年振りだろうな………」



クライブは、至って平然としているベルトークとやや困惑気味のジスカを見下ろした。


「…………全兵突入後、私は好きにさせてもらう。…………………………私の邪魔だけはするなよ………」

「………お気をつけて…」

ベルトークの、敬礼と共にかけられた言葉に、クライブは苦笑を浮かべた。



ゆらゆらと揺れるオルカのの尾が、急に早くなった。


「………………………………無用だ。………………その様な言葉は……」



聞き取りにくい低い声で呟くや否や、クライブの身体がオルカ同様、ぼんやりとした黒光りする輪郭へと変わった。











―――ビュッ





















空気を切る様な音と共に、目の前を突風が過ぎ去った。

砂埃が舞い散り、視界が霞む。



目を開けると、オルカに乗った総隊長の姿は既に無く、荒野へと真直ぐに伸びる地面を削った様な後だけが、二人の前に残されていた。























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