亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「―――第1師団前へ!弓兵、前列構え!」
薄暗い荒野を前に、リストは叫ぶ。
城壁の上で仁王立ちするオーウェンは、広大な荒野の現状を目の当たりにし、口笛を鳴らした。
「…………初っ端から……これかよ」
いくつもの戦場を見てきたため、敵がどんなに奇な行動をとろうが驚かなくなっていたが………。
………これは…さすがに……。
荒野の赤土の肌に……真っ黒な兵士が次々と押し寄せてきていた。
………全兵だ。
各隊ごとに前進とか、二手に分かれるとか……そんな常識は今や皆無。
敵兵は一人残らず、荒野に躍り出た。
なんて大胆な……無謀にも思える行動。
罠の可能性を考えていないのだろうか。
(……………これで最後…か。………………………そういう、覚悟か………!)
軽く舌打ちし、城壁から飛び降りた。
………全兵が出て来たのだ。いくら厳重に守りを固め、兵士を配置しても、これでは量で押される。
こちらもそれ相応の勢力をぶつける他あるまい。
先頭をライマンが走っていた。
“闇溶け”で半ば身体が黒く透けた状態で。
牙をむき出しにして。
「―――ガアアアアアアア!!」
数十匹のライマンが一斉に吠えた。
それに呼応する様に、朱色の毛を逆立たワイオーンが吠える。唸る。
ブレイズツリーの樹液が塗られた牙が、てらてらと光っていた。
戦場で指揮をとるリストは、弓兵に向かって叫ぶ。
鋭利な刃を供えた数百の矢が、宙を仰ぎ、敵兵に向かって天から雨の如く降り注いだ。
瞬時に避けながら疾走する敵。
矢が放たれたと同時に、ワイオーンが放たれた。
「――…全てのワイオーンを放て!!………燃やせぇ!!」