亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
荒野全体が、交じり合う剣の火花と、夜を照らす炎と、血の赤に染まっていた。
丘の上から見下ろすその光景は、凄まじい。
至る所に人間と獣の屍が散らばっている。
塔の最上階から城門の上に跳び移り、キーツは荒野にいる筈のオーウェンとリストの姿を探した。
兵士で埋め尽くされた薄暗い戦場で、二人の人間を探すのは困難だ。
目を凝らしていると…………キーツは、なんとも奇妙なものが戦場をグルグルと旋回していることに気付いた。
…………風?
………ぼんやりと黒光りする風が、目にも止まらぬ速さであちらこちらを移動している。長い長い砂埃の道が出来ている。
戦場にいる兵士達からすれば、それはただの突風でしかない様たが。………害は無い、とは限らない。
……………。
何かが、引っ掛かる。
そう、あれは……。
「………総団長!?」
城門を警備していた兵士が、剣を手に丘から降りるべく向かってくるキーツを見て、声を上げた。
真剣な面持ちで、真直ぐに城門を超えようと歩んでくる。
その後ろを、ゆっくりとルアがついてくる。
………全ての要となる大将が、こんな時に…こんな荒れ狂う戦場へ、降りるなど………。
兵士数人が前に立ちはだかり、必死で我が長を止めようとした。
「――…総団長!!……何を考えているのですか!……い、今…荒野の戦況は激化しております!!」
「………所々火の明かりがありますが……敵味方の区別がつきにくい程の暗さです!!…………危険すぎます!どうか丘から降りることは………!!」
耳を貸す様子も無く、キーツは歩みを止めない。