亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
背後から、敵兵士が剣を振り下ろしてきた。
動作は素早く、中々の腕だったが、イブから見ればそれは遅過ぎる。

ヒラリと身を捻って刃を避け、思い切り兵士の胸に右ストレートを放った。

11歳の、しかも女の子の小さな拳は、兵士の胸に深く沈み………その大柄な身体をぶっ飛ばした。

五、六メートル程軽く飛ばされ、勢いよく地面に叩き付けられた。赤茶色の砂埃が舞い散り、視界を覆った。
イブは独り、ガッツポーズをとる。

「うっしゃぁ―!綺麗に決まった!肋骨が砕けたかな?……よし。………今度はあっちに…」

次の獲物は…とその場で踵を返した。







その途端。















イブは瞬時に両手の爪を伸ばし、後ろに振り返り様に…………刃を、受け止めた。


………突然、背後の砂埃の向こうから、殺気の塊が突進して来たのだ。

敵は気配を隠していたのか、最初はその存在に気付かなかった。
…少し反応に遅れたが、ギリギリの所で受け止めた。



………カチカチ…。


互いに押し合う鋭利な爪と剣。


それを挟んだ向かいにいる敵の姿を見て、イブは、意地悪そうな薄い笑みを浮かべた。












「―――………なーんだ………甘ちゃんじゃん……」

「………ふん……もっとマシな呼び方は無いのか……?」


リストも同様に笑い、睨み合ったまま弾いた様に同時に大きく後退した。


互いに動きを警戒しながら、じりじりと距離をとる。

イブは腰から剣を抜き、リストは二本の短剣を構えた。

「………あんたから来るなんて…えらく積極的ね―。…せっかちなだけ~?…………首は洗ったの?」

「………生憎……負けるつもりは無い………悪いな…」

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