亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………フェーラには、フェーラだろ。…………………ああ、そうさ。僕は………お前らフェーラが…化け物共を心底憎んでいる…」
「…………………無理しちゃって……さっ!」
イブは高く跳躍し、クルクルと回りながらリストに向かって鋭利な爪で突いた。
同じ様に伸ばした爪でそれを受け止められると、イブはリストの頭を顎から蹴り上げようとした。
…が、見抜かれていたのか、目にも止まらぬ速さで腹部に肘打ちを食らった。
―――……速い。
一瞬だけ息が止まった。
思わず瞑った両眼の代わりに、額の第三の目が、真直ぐに突いて来るリストの爪を捉えた。…………刺される。
「………こんのっ……!」
反射的に口内を歯で浅く噛み切り、溢れた血を霧状の吐息と共に吹き掛けた。
目眩ましとなる血の混じった濃い吐息は、比較的強い酸性の毒でもある。
浴びた相手は麻痺したり、火傷を負うのだが、リストには目眩ましにしかならなかった様だ。
リストの動きが止まるや否や、イブは大きく後退した。
距離をとり、腹を抱えてゲホゲホと咳き込む。
………ハーフと雖も、やはりフェーラ。
雌よりも戦闘能力の高い雄の拳は、圧倒的な力の差を感じさせる。
………人間の身体のままだったら危なかった。肋骨粉砕だとかじゃすまない。
(……………厄介なのに嫌われたなぁ………本当に……)
お腹を擦り視線を前へ戻すと、既にスタンバイしているリストが、こちらを睨み付けている。
「………か弱い女の子を柔肌を殴って…罪悪感は無いの―?」
「無いな」
即答かよ、と顔をしかめる。
………こいつ…敵は敵でも………女の敵だ。
(…………………最低…)
イブは体勢を整え……地を蹴った。