亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
赤々と、燃えている。
遥か彼方の、沈黙の森の果てで………いくつもの生命が絶たれる音が、聞こえて来る。
それは鼻を突く焦げ臭い異臭と共に……風に運ばれて。
神声塔の天辺から見える光景。
月も隠れた真っ暗な世界。
夜という、闇が権力を振るう世界で、ただ一ヵ所のみ………昼の様に、明るい。
………私は……どうしてこんな所にいるのだろう。
………後悔している。これが正しい事だとしても……彼の願いだとしても………後悔ばかりが積もる。
皆………戦っている。
私は。
暗い個室で独り。ローアンは戦場の明かりから目を背けた。
神声塔の最上階にあたるこの部屋は、大昔、占い事を行う場所であったという。
クーデター前はこの部屋に、鏡や魔法石など様々な道具があったらしいが………盗難にあって今は何も残っていない。
あるのは文字が刻まれた重々しい石盤と、床に爛れた蝋、焼け屑、蜘蛛の巣……。
部屋を囲む様に置かれた石盤。
何気なくその側に近寄り、刻まれた文字を指でなぞる。
………暗くて何も見えない。
離れた所に置いていたランプを手に、石盤の文字の群れを照らした。
………見たことも無い…不思議な……奇妙な文字だ。
…………古代文字でも…どれにも当てはまらない。
…………殆ど解読不可能な文字だ。
―――…しかし。
(……………読める…)
生まれて初めて見た、訳の分からない文字。…………それなのに………読める。すらすらと…不思議なくらい。