亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
神秘的な現象を目の当たりにし、ローアンはただ目を丸くするばかりだった。
「………!?」
独りでに灯った蝋燭の火がゆらりと揺らめいたかと思うと………。
………青白い小さな文字が、目線の高さの何も無い空中に浮かび上がった。
………アカシック年代記を使った時と似た現象だ。
しかし、今目の前に浮かぶ文字は………神の言語だった。
………ここは太古からある、神の声を聞く神声塔。
………………ならばこれは………創造神アレスの………………御告げ。
たった一行だけの、短い神の言葉。
神々しく輝く言葉を見て………ローアンは………………。
………ローアンは消えたランプを手に、壊れた窓から飛び降りた。
最上階から遥か下方の地面へ落下し、音も無く着地した。
塔の周りを見張っていた護衛の兵士達は、思わぬ所から出て来たローアンに、皆驚愕の表情を浮かべた。
慌てて駆け寄る兵士達に、ローアンはあろうことか、背中を向けて走り出した。
「―――…!?………ローアン様!?」
その意味の分からない逃走とも言える行動に一瞬唖然とし、兵士達は追いかける。
しかし、ついこの間まで現役兵士だったローアンの駿足には追いつけない。
小さくなっていく後ろ姿を見失わない様にするだけで精一杯だった。
「……ローアン様!?」
「―――何処に行かれるのですか!?」
ローアンは狭い路地を抜け、広場の人込みに戻った。
素早い動きで人を掻き分け、そのまま真直ぐ………止めてあった馬車に向かった。