亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
顔にべったりと付いた返り血を手の甲で拭い、オーウェンはしかめっ面で怒鳴った。

「………ハアハアハアハアって……息が臭いんだよお前ら!!」


オーウェンの前には、威嚇する数匹のライマンが立ち塞がっていた。


牙を覗かせ、低い唸り声を上げている。

………飛び掛かって来た一匹は仕留めたが………次はそう上手くいかないだろう。

なんてったって、相手は学習能力の優れた獣だ。人間様と同じ位ずる賢い。


「ったく………犬は犬同士戯れ合ってろ………」

太く長い槍を大きく振り回し、ブンッ…と横一直線に宙を切った。

途端、凄まじい衝撃波が起こり、オーウェンを中心に地面に亀裂が走った。
足場が盛り上がり、とても立っていられる様な状態では無くなり、ライマン達は大きく後退した。


もう一発地盤破壊をしようと、オーウェンはゆっくりと構えた。


すぐには近寄らなくなったライマン。オーウェンの出方を窺うかの様にジロジロと凝視しながら構えている。






―――……その、背後。









血が混じった赤い砂埃と、銀河の様に瞬く火の粉と、屍と、屍になりそうな対峙する兵士達。

何処を見てもその背景は変わらないのだが。









…………今ここにいてはおかしい人物が、そこに一瞬だけ見えた。

その後ろ姿はすぐに見えなくなったが……間違ない。

オーウェンは顔をしかめて舌打ちをした。

(―――……キーツ…!)


あんの…馬鹿野郎!!
何もこんな大乱闘の最中に出てこなくってもいいだろう!

………自分の立場が分かってんのか…!?



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