亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
薄暗いせいで敵味方の区別が付きにくい。

間違って襲いでもしたら、洒落にならない。

ルアも多分同行しているとは思うが……護衛も付けずにたった一人で戦場のど真ん中に来るなど………上に立つ者にはあるまじき行為。

行ってこっぴどく叱らなければ……気がすまない。
こんな所で犬の遊び相手をしているのが馬鹿馬鹿しく思えてきた。

オーウェンは構えるライマンを完全無視し、キーツの後を追うべく走った。


「…………キーツ!…………おい…!………………………………っ…!?」








一歩前へ踏み出した途端、オーウェンは弾かれた様に後ろへ飛退いた。




………目と鼻の先に、横一直線の空気の溝が見えた。目に見えない筈のそれはピタリと静止したかと思うと……………その場で破裂した。


ビュウッ…という、目に見えない音だけの空気の破裂音。
同時に、それは突風を巻き起こし、かまいたちの様な鋭利な風を混じらせてオーウェンの身体を吹き飛ばした。

高く吹き飛ばされたオーウェンは、地面への衝突の勢いを和らげるために宙で体勢を整える。

………が…。









「―――周りをよく見ろ。オーウェン=ヴァン二」










いつ聞いても不快になる、透き通った低いテノール声。


含み笑いを交えて、耳元で囁かれる。



………途端、脇腹に強力な衝撃が打ち込まれた。
剣の柄で殴られたのだろうか。


整えた体勢は一気に崩れ、オーウェンはそのまま赤土混じりの地面に背中から叩き付けられた。



………立ち込める砂埃。

……一瞬、息が止まった。

素早く身体を起こし、少し咳き込みながら脇腹を押さえる。






(………………痛え……)


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