亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
絡み付いた太い根が、凹凸の激しい地面を形成している。
盛り上がった根やぶら下がった蔓に何度も足をとられたり、マントに引っ掛かったりと、一定のペースでなかなか前へ進めない。
…焦燥感が沸き起こる。
走っている内にフードは外れ、結っていた髪がだんだんと解けてきていた。
………垂れた長い髪の先に、ぶら下がった蔓が引っ掛かる。
(―――………くそっ…!)
素早く剣で蔓を切り、再び走り出す。
…………距離はそんなに遠くないのに…………!
………これでは……間に合わないのでは……。
大きな根を越え、自らの重みに耐え切れず垂れ下がった太い枝の上に跳び移った。
………が、その瞬間、ローアンの身体がバランスを崩した。
枝は腐っていたらしい。
バキッ…と鈍い音がした途端、枝は幹の部分から折れた。
………地面からさほど距離は無いが、下は岩場だった。
ひび割れて先の尖った石がたくさんある。
「………っ…!?」
まずい、と木の幹に手を伸ばしたが、薄情にも幹の表面はじっとりと濡れていて、伸ばした手は滑り落ちた。
………ローアンは受け身を取ろうと身体を捻ろうとした。
岩場に落ちる。
……筈だったローアンの身体は、岩場に落ちるどころかそのままその上を越えて、物凄い速さで前へ進み出した。
唖然とするローアン。
………いつの間にか、自分が跨がっているのは……。
「―――………トゥラ…!?」
一体今まで何処にいたのか。なんだか懐かしく思えて仕方が無い漆黒の相棒が、ローアンを背中に乗せて疾走していた。