亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
異様な空気の乱れ。
この戦場に突如として乱入してきた、第三者の気配。
それを、ダリルはいち早く感じ取っていた。
血塗れた剣をぶら下げたまま、赤い火のダイヤモンドダストで彩られた空を見上げる。
………見えない。
だが………………何かが…………。
………もう、ここにいる。
……背後から、ふっと沸いた様に殺気を感じた。
………まだこの辺にも敵を取り残していたのか、と剣を構えて、振り返り様に思い切り切り付けた。
手応えはあった。
剣がめり込む感触と、飛び散る生暖かい返り血。
頬にかかったそれは肉片混じりのドロリとしたもので。
……………真っ黒、だった。
ダリルは大きく目を見開き、唖然とした。
横一文字に浅く切り付けたそれは、人間の形すらしていない。
丸みを帯びた、歪な形状。ドロドロとしていて、粘着質な音が響く。
こちらを見詰める菱形の真っ赤な目玉が、四方八方にギョロギョロと蠢き、ピタリとダリルに焦点を合わせた。
―――………影だ。
「…………っ……!」
反射的にダリルは、影の目玉に剣先を向け、思い切り貫いた。
生々しい悲痛な呻き声が辺りに響き渡り、鼓膜を振動させる。
ブルッと大きく痙攣した影は、力無くその場にズルズルと黒い水溜まりを作っていった。
…………どうして…影が。
ここ最近、全く目撃情報が無かった。
それなのに今になって…急に…。
(…………今…だからか?)