亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
…巨大なかまいたちの風が、荒野中央から飛来する。

湧いてくる影はことごとくそれに切り付けられ、粘着質な黒い液体と化していくが、すぐに再生し、至る所で群れを成していった。

それらの影は徐々に大きさを増し、狂暴になっている。


「………」


地中から伸びるパラサイトの枝が絡まり、籠の様な形となってマリアをすっぽりと覆い隠していた。

枝と枝の隙間から、牙が並ぶ大きな口を開けて何十もの影が目玉をぎょろつかせて見ている。

ただ無言で佇むマリアを映す、並んだ赤い眼は、地中から伸びた細い枝に次々と貫かれていった。

それでも再生する影達。
いくら貫かれようとも再び瞳に赤色を宿し、唾液で光る牙を向けてくる。




…………自分を食らおうと迫るこの黒い化け物を………マリアはじっと、憎らしげに見詰めた。







…………愛しいあの子を食らっておいて……………………まだ足りない?


そんなに食べたい?

かぶりつきたいの?






「―――……近寄らないでよ…!」


キッと睨み付けた途端、マリアを覆っていた太い枝がシュルシュルと解け、群れなす影達を足元から貫いた。

……赤い枝がビクビクと脈打つ。
生命力を吸われ、影の目は次第に光を失っていった。




「―――………っ…」





………足が疼く。

同時に胸が締め付けられる様に痛い。



堪らず屈み込んだマリアの背後に影が回って来たが、何処からともなく枝が生え、影を貫いた。













(……………浸食が…進んで……………………………)









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