亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~








「―――っはあああああ!!」


ブンッ……という空気抵抗による大きな音が響き、キーツの剣は振り下ろされた。


ビリビリと空気が波打ち、衝撃波が鋭利な風となって飛来した。

それを実にゆっくりとした動作で、紙一重で避けるクライブ。

楽しんでいるのか何なのか。彼は始終、その不気味な笑みを浮かべっぱなしだ。


放たれた衝撃波は彼の長い白髪を靡かせただけで、自分達を取り囲む影の群れに当たった。


「―――………当たらなければ………意味が無いぞ」

その声はすぐに騒音で掻き消えた。
白い髪の間から見える歪んだ口が、ニヤリと更に深く歪んだ。


………途端、下を向いていた彼の剣先が、滑らかな動きでゆっくりと上がり、キーツの目線でピタリと止まった。

咄嗟に飛び退こうとした時、いつの間に回られたのだろうか、召喚獣のオルカが大きな口を開けて後ろから突っ込んで来た。

(―――ちっ…!)


キーツを食らおうと迫って来た血で赤く濁った牙に、身を捻って躱しながら剣の柄で叩き付けた。

……凄まじい威力の一撃で…上顎の骨は陥没し、牙が数本砕けた。
オルカは耳障りな鳴き声を上げて、勢いはそのままに少し離れた所に頭から突っ込んで倒れた。

オルカの様子など見ようともせず、素早くクライブに向き直った。




………移した視線の先には、青い光沢を放つ刃が…キーツを迎えていた。













「……………周りをよく見ろと、教えた筈だ。………………………………『Ειναι εζμ (ここにいる)』」




……目と鼻の先に、真っ黒な魔方陣が浮かび上がった。



―――瞬間、小規模の爆発がキーツを襲った。

< 951 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop