亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
菱形の眼球は両断され、トゥラに噛みちぎられた。
そこら中から湧いてくる。これでは切りが無い。
影は沈黙の森から続々と現れ、荒野の方へと向かっていた。
しかし、ローアンを見るや否や方向転換し、次々と襲いかかってくる。
(………狙いは……私……?)
影は、城の解放を妨げようとしているのか?………そんな意志が働いている?
思い当たる事はある…。
影は何故か、昔からローアンの元に集まってきていた。
最初は偶然なのだろうと深く考えなかったが…………自分が開城するための鍵であると知った今、影達の行動の真意が分かった気がした。
威嚇するトゥラには目もくれず、影の口はローアンに向けられる。
「突っ切るぞトゥラ!!」
鳥型の影が飛来してきたのを屈んで避けながら、ローアンは前へ走った。
戦場の火の粉が見える。
荒野はもう目の前だ。
真っ黒な視界に、赤々とした光がちらつく。
覆い茂る葉や細い枝を掻き分け………沈黙の森を、抜けた。
瞳に映ったのは、丘の上で純白に輝く巨大な城。
赤く染まり、ひび割れた大地。
燃える樹々と草原。
広大な荒野に点々とある人間と獣の屍。
その下から起き上がる何百という数の真っ黒な影。
吹き荒れる赤と黒の風。
荒野中央から昇る、魔力の欠片が漂う煙。
戦場。
戦場という名に相応しい、凄惨な景色。
―――――酷い。
ここには。
何も、無い。