亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「………トゥラ、お前はついて来ては駄目だ……巻き添えになりたくないだろう…」
そう言って撫でてやると、トゥラはこの時初めて擦り寄り、甘えた声で鳴いた。
………あの時置いて行かれた事を思い出しているのだろうか。
寡黙で優しいこの子は、離れてくれない。
「…………お前はそんなに…甘えん坊だったか?」
トゥラに微笑を浮かべ、ローアンは丘の上の城に視線を移した。
「早く……行かないとな……」
この戦場を突っ切り、真直ぐ城へ向かおうと決意した。
その瞬間。
………掴んでいた剣が、音を立てて足元に落ちた。
………ローアンは地に両手を突き、突如襲ってきた激しい頭痛に悶えた。
…………痛くて…苦しくて………声が出ない。
「……………は……ぁ…………」
傍らにトゥラが寄って来た。心配そうに主人をじっと見詰めている。
ローアンは頭を抱えだし、肩で息をしながら蹲った。
(……………何?…………………割れる…………)
まだ取り戻せていない、忘れていた記憶が一変に頭の中に入り込んで来る。
それは懐かしい記憶の断片が繋がっていくのと同時に、凄まじい苦痛を伴った。
「…………う…………………ああああ…!」
クライブの動きが、ピタリと止まった。
頭から流れる血が目に入ってよく見えないが………目の前の男はかけようとしていた魔術を急に中断し、手を下ろしてぼんやりと空を見上げた。
(………?)