亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
虚ろな瞳は何かを映す訳でも無く、ただ真っ暗な月も無い空を見上げる。
キーツは警戒しながら、急に戦意を無くしたクライブを見詰めていた。
「……………………………………………ふ……」
…………突然、クライブの口元が緩んだ。
肩を小刻みに震わせ、ゆっくりと俯きながら………静かに笑った。
…………低い掠れたその声は、妙にキーツの耳に響く。
「…………ふふふ…………ふはははは…………………………………………………はぁ…」
………クライブの剣が揺れた。反射的にキーツは構えたが、彼の剣はこちらに向くことなく、なんと鞘に収められた。
「――……何のつもりだ?」
その問いに、クライブは俯いたままポツリと小さく答えた。
「…………………お前との遊びも、ここまでだ」
「……………何だと…!?」
「………………オルカ」
いきり立つキーツを傍目に、クライブはオルカを呼んだ。
青黒い不気味な血に塗れたオルカが、クライブの元に素早く飛んで来た。
そしてあろう事か、クライブはその場でオルカの背に乗った。
………戦闘放棄だと!?
「―――…クライブ!!」
「…………聞こえなかったか?」
オルカの背中に立ち、クライブは自分を睨み付けるキーツを、笑いながら見下ろした。
「…………遊びは終わりと言ったのだ。…………………私の成すべき事に………お前の存在など、最初から無い………」
「………っ…!」
キーツは素早い身のこなしでクライブに近寄り、剣を振るった。
………が、オルカはクルリと宙で反転し、いとも容易く避けた。