亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
仄暗い明かりの中。
吹き込む風の声しか聞こえなかったか静寂の空間で、何処からかけたたましい騒音と衝撃が鳴り響き、ローアンは足を止めた。
小刻みな地鳴りが靴底から伝わって来る。
まだ荒い呼吸を落ち着かせて、屈み込んでそっと耳を地に付けた。
さほど遠くない場所から……。
異なる足音は二種。何処かで二者が争っている様だ。
………先程の分かれ道の…反対側の道から、ではないだろうか。
…………一体誰が。
ローアンは起き上がり、長い廊下の先へ進み始めた。
………この遥か先から……もう一つだけ。…………………足音が聞こえた。
……………クライブだ。
彼はどんどん、先へ、謁見の間へ………向かっている様だ。
(…………早く………あの人を………)
………追いついたからといって、どうこう出来る訳では無い。
実力は一目瞭然。彼と一対一で殺り合えば、自分の負けは確実なのだ。
こうやって追いかけるのも、きっと無意味な事だろう。
今度こそ、殺されるだろう。
そんなことは………承知の上。
分かっているけれども、それでも………ローアンは追いかける。
ただひたすら。
足が動く限り。
幼い頃……貴方の背中を追いかけていた様に。
ただあの時とは、状況も、立場も違う。
私がついて来ているか、振り返ってはくれない。
でも私は、いつの頃だったか。
貴方に言いました。
ちゃんと、ついて行くから。
決して、振り返らないから。
「……………総隊長………」
彼の背中は見えないが、この先にいる。
この、先に。