亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
誰か。
誰でもいい。
…………この現実を………否定して……。
「―――…リネット…………お姉…様……?」
顔をゆっくりと上げたリネットは……ニヤリと、笑いかけてきた。
それは紛れも無く、あの………目の前で、自分を庇って死んでいった………姉。
リネット。
茶色の長い髪も、切れ長の目も………記憶の中の姉の姿。
それ以外何者でも無い。
13歳の小柄な姉が、私の前に立っている。
少女らしからぬ不敵な笑みで、光の無い虚ろな瞳で、私を見ている。
緑のドレスの下は、ドロドロとした黒い粘着質な身体が覗いていた。
………影である事は間違無い。
しかし……リネットでもある。
………影が作り出した姿だろうか……?
…………しかし、ここに来るまでに………一つも屍を見ていない。
残酷な殺人が行われた空間に、肝心の死体が喪失していた。
…………ということはやはり………あのリネットは…………あの時死んだ………………………………あの…リネット本人……?
カチカチカチ……と、腕の震えが短剣に伝わる。
………嫌だ。
………どうして………どうして私を守ってくれた姉に……………………刃を向けなければならないのだ。
………嫌だ……。
…………嫌。
「…………嫌ぁっ……………!」
頭の整理が付かない。
混乱している自分を、客観視する自分がいる。