亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~



誰か。

誰でもいい。








…………この現実を………否定して……。

































「―――…リネット…………お姉…様……?」




















顔をゆっくりと上げたリネットは……ニヤリと、笑いかけてきた。







それは紛れも無く、あの………目の前で、自分を庇って死んでいった………姉。

リネット。

茶色の長い髪も、切れ長の目も………記憶の中の姉の姿。

それ以外何者でも無い。

13歳の小柄な姉が、私の前に立っている。




少女らしからぬ不敵な笑みで、光の無い虚ろな瞳で、私を見ている。

緑のドレスの下は、ドロドロとした黒い粘着質な身体が覗いていた。



………影である事は間違無い。

しかし……リネットでもある。




………影が作り出した姿だろうか……?




…………しかし、ここに来るまでに………一つも屍を見ていない。

残酷な殺人が行われた空間に、肝心の死体が喪失していた。









…………ということはやはり………あのリネットは…………あの時死んだ………………………………あの…リネット本人……?







カチカチカチ……と、腕の震えが短剣に伝わる。



………嫌だ。









………どうして………どうして私を守ってくれた姉に……………………刃を向けなければならないのだ。





………嫌だ……。




…………嫌。








「…………嫌ぁっ……………!」















頭の整理が付かない。

混乱している自分を、客観視する自分がいる。

< 980 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop