亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
『――――フフフフフフ』
小首を傾げて微笑むリネット。
可愛らしいか細い声は、ローアンを嘲る様にも聞こえる。
ブラリと垂れていたリネットの小さな手が、ドロリと黒く溶けたかと思うと………次の瞬間、その小柄な姿にはそぐわない長い剣が握られていた。
「…………お姉様………」
………一歩、また一歩……ローアンは後ろに下がった。
………リネットの手の中で、ユラユラと揺れる銀の刃。
虚ろな瞳は中庭をぼんやりと見渡し、足元の花を見下ろしたり、ローアンをじっと見詰めたり………。
まるで、壊れた人形。
無機質な視線がローアンに注がれる。
『―――フフフ…フフフフフ………』
ヌチャ……。
一歩。……リネットが、足を踏み出した。
ドロドロの下半身が、流れ込む様に前へ進む。
……来ないで。……来ないで下さい。
ヌチャ……ヌチャ…。
次第にその歩みは、速度を増していく。
姉から遠ざかる他に、どうすることも出来ないローアン。
『――――――ア……』
リネットが、小さな声を漏らした。
―――途端、遠くにあった彼女の姿が、物凄い速さで至近距離に迫って来た。
バネの様に跳躍した身体は粘っこい黒い糸を引き、ローアンに襲いかかった。
華奢な腕が、軽やかな動きで剣を振るった。
ローアンは反射的に短剣で受け止めた。
……リネットは次々に剣を振り翳す。
『―――フフッ………ハハハハハハ……アハハハハハハ!』
「――…っ………お姉様ぁっ………!!」