亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~


『――――フフフフフフ』


小首を傾げて微笑むリネット。

可愛らしいか細い声は、ローアンを嘲る様にも聞こえる。






ブラリと垂れていたリネットの小さな手が、ドロリと黒く溶けたかと思うと………次の瞬間、その小柄な姿にはそぐわない長い剣が握られていた。



「…………お姉様………」

………一歩、また一歩……ローアンは後ろに下がった。



………リネットの手の中で、ユラユラと揺れる銀の刃。

虚ろな瞳は中庭をぼんやりと見渡し、足元の花を見下ろしたり、ローアンをじっと見詰めたり………。

まるで、壊れた人形。



無機質な視線がローアンに注がれる。







『―――フフフ…フフフフフ………』






ヌチャ……。


一歩。……リネットが、足を踏み出した。

ドロドロの下半身が、流れ込む様に前へ進む。




……来ないで。……来ないで下さい。





ヌチャ……ヌチャ…。


次第にその歩みは、速度を増していく。


姉から遠ざかる他に、どうすることも出来ないローアン。








『――――――ア……』






リネットが、小さな声を漏らした。






―――途端、遠くにあった彼女の姿が、物凄い速さで至近距離に迫って来た。

バネの様に跳躍した身体は粘っこい黒い糸を引き、ローアンに襲いかかった。

華奢な腕が、軽やかな動きで剣を振るった。

ローアンは反射的に短剣で受け止めた。

……リネットは次々に剣を振り翳す。


『―――フフッ………ハハハハハハ……アハハハハハハ!』




「――…っ………お姉様ぁっ………!!」







< 981 / 1,150 >

この作品をシェア

pagetop