亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
イヨルゴスが頭を押さえてこちらに剣を振り翳した。
全員が一斉に身構え、剣筋を見抜いて避けた。
大響音と共に激しい地鳴りと突風。
離れた場所に着地したアレクセイの隣りに、“闇溶け”でダリルが現れ、無感情な声で呟いた。
「…………精神破壊を招く」
「……精神…破壊?」
「………そうだよ。危険な石でしょ?………魔力も体力も殆ど吸われて……頭が馬鹿になった怪物は、当然………理性も無く暴れ回る。今まで以上に狂暴化するってこと。分別無く叩いて斬って………自虐行為もするだろうね。………………ただ…………確実に、弱くなる」
………危険は増えるが、その分倒せる可能性は高くなる。
それを覚悟の上で、使うかどうか。
「………俺は使う事に賛成だぞ、アレクセイ」
いつの間にか傍らに立っていたキーツが笑みを浮かべて言った。
………アレクセイは顔をしかめる。
「………ですが……………狙われているのはキーツ様なのですよ………」
「………その俺を囮にしようとしていた奴が、何を心配してるんだ?…………………良いんだ。…………可能性がある方へ、俺は賭けるぞ………」
そう言うや否や、キーツはアレクセイの手から空の魔石を奪い取った。
アレクセイの声を背中で聞きながら、キーツは…………。
二つの石を、一緒に投げた。
無機質な光を放つ石はキーツの手を離れ、クルクルと回転し、暗い上空へ真直ぐ、飛翔した。
石は、イヨルゴスの眼前へ。
そして。
………一瞬、白と黒の光りが頭上で交差した。
イヨルゴスの声だろうか。
痛々しい低い咆哮が、夜空に波打った。