亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
「…………」
その悲痛な叫びを、マリアは戦場の片隅でぼんやりと聞いていた。
…………足が………痛い。
身体が………痛い。
霞んで見える視界。
自分の周りを囲む影達。頭上から鳥型の影が裂けた口を開けて飛び掛かって来たが、触れるか触れないかの寸前で、足元から伸びた枝が影を貫いた。
「……………」
荒野の中央辺りが、先程よりも騒々しさを増した。
空高く舞い上がる砂煙と、物凄い速さで振り回される巨大な剣。大きな四本足の蹄は激しく地団駄を踏む。
頭を抱え、上半身を弓なりに反らす青白い肌は、ドクドクと脈打つ血管が浮き出ている。空いた手で胸元を掻き、首に爪を立てている。
苦しんでいる。
そして………狂っている。
………怪物は………本物の怪物と化したのだ。
怪物が目茶苦茶に振り回す剣が、城のある丘を削った。
固い岩壁が音を立てて崩れている。
影に苦戦している二勢力の兵士達はそれに巻き込まれ、突風に投げ出されていた。
何だったかしら。
私のしたかった事。
ふと、そんな疑問が頭を過ぎった。
―――復讐。
………復讐……?
…………確かにそうだけど………。
目の前に広がる光景は……………望んだものじゃない。
私はここにいるだけで、私は何もしていない。