亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
心配そうに駆け寄るイブとダリル。
しかし、そんな二人の声が届いているのかいないのか、マリアは反応しない。
「……………マリア?」
イブはクン…と鼻を利かせた。
………マリアから香ってくるのは…………濃い樹木の匂いのみ。
「…………マリア……………駄目だよ……」
嫌な予感がする。ダリルはマリアの前を遮った。
………地を這う枝が、ダリルを避けて前へ進もうとする。
「…………………二人共………退いて……」
怪物を見上げたまま、マリアは呟く。彼女の目に、光は無い。
「………やだっ……………ねぇ…マリア……………あたし嫌だよ……」
「………………何しようとしているか位……分かってるからね………………止めなよマリア…………マリア……」
行かせまいとマリアの行く手を阻みながら、衣服を掴んで必死に訴えてくれる二人。
昔からそうだ。
こんな小さな子供に、私は何度守られて……慕われて……。
感情の無かったマリアの表情が、不意に……微笑を浮かべた。
いつも見る、見慣れた……マリアの柔らかい優しい笑み。
「………………私の代わりに、隊長にありがとうって……言ってね」
「………マリア!!」
「………多分もう、伝えられないから」
「……何…言ってんの」
「……………ほら………二人共…危ないから、離れて。…………もう…………制御………出来ないから………」
「…………やだ………嫌……嫌!…嫌だ!嫌!嫌!…………………………………やだよぅ………」
イブが泣きそうな顔ですがりついて来るのを、マリアは遮った。
ごめんね。
ごめんなさい。