鶴見の鳩
私はこの時初めて合点が行った。

彼は、あの漆黒の九鳥は、ただ蔓

然と孤独を楽しんでいたのではな

い。関わりを避け、逃げていたの

ではない。日の生活の源を得るた

め、必死になって隅々まで餌を探

し回っていたのだ。

思いも由らず胸が詰まった私は、

視線を頭ごともち上げた。すると

いつ入線したのか、眼前のホーム

には、さっき私を見捨てた銀色の

車体が私を待っているではないか

。いつの間にか隣にいた外人や少

年らも車内に座り、不思議そうな

視線をこちらに送っている。

私は大慌てで用意し、発射メロデ

ィの鳴り響くホームから電車に乗

り込んだ。

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