今夜、俺のトナリで眠りなよ
『妻』になろうって、頑張って……努力して。なのに全然『妻』になれなくて。

 結局、『妻』であることを諦めたくなってる。

 私に好意を抱いてくれてる一樹君に、甘えてる。

 一人で頑張らなくちゃいけないのに。一樹君に頼ってる。

「馬鹿野郎っ!」

 私の横で車が停まると、一樹君が怒鳴りながら降りてきた。

 すごく怒ってるみたい。

 ガードレールをひょいっと飛び越えると、私の身体をぎゅうっと抱きしめた。

「くそっ。こんなに身体が冷えて。ふざけんな。何、考えてんだよ」

 あ、温かい。

 ぽかぽかと温かい一樹君の身体に包まれると、私は胸に頭を預けた。
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