今夜、俺のトナリで眠りなよ
「やだ。大丈夫よ。一人で歩けるってば」

「靴を脱ぎ捨てて、座り込んでた女が強がるな。…たく。無理するあんたを見ていると腹が立つんだよ、俺は」

 助手席のドアを閉められた私は、シートに身体を預けた。

 一樹君は路上に置いてある私の鞄と靴を掴むと、後部座席に放り込んだ。

 運転席のドアの前に立つと、どこかに電話する。

 5分くらいだろうか。電話を切ってから、運転席に座った。

「あんたの母さんに電話したんだ。心配してたから」

「お母さんが?」
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