今夜、俺のトナリで眠りなよ
 平日、土日関係なく、家に居ない人だったのに。今日はどういうわけか、私服でのんびりと過ごしていた。

「お昼は何にしますか?」

 洗濯物を干し終わった私は、優樹さんに声をかけた。

 新聞から目を離した優樹さんが、私に視線を送ると「何でもいい」と答えてくれる。

「優樹さんの好きな物を作りたいんです。教えてください」

「僕の好きなもの?」

「はい」と私が頷くと、優樹さんが困った顔をした。

「別に、これと言ってないけど」

「あ、でも」

「君が作れる物を作ればいい」

 優樹さんが視線を新聞に戻した。

 困る。優樹さんが家にいるときは、優樹さんの好きな物を料理したいって思っていたのに。

 私は優樹さんに背を向けると、口をへの字に曲げた。

 これじゃあ、優樹さんが何が好きなのかわからない。

< 15 / 135 >

この作品をシェア

pagetop