今夜、俺のトナリで眠りなよ
「一樹君はわかってたの?」

「わかるだろ。あの人の性格じゃあ、穏やかに食事を楽しむとは思えねえ」

「わかってて、居てくれたんだ」

 一樹君が、「まあな」と小さくと呟くと、空になった皿同士を重ね合わせた。

「ありがと」

「別に礼なんていらねえし」

「感謝してる」

 一樹君が、ゴホンと喉を鳴らすと、横を向いた。

「片づけは俺がやっておくから、シャワー浴びてくれば」

「いいよ。片づけは私がやるから」

「心身ともに疲れてるだろ。あの女の嫌味に耐えたんだ。気分転換して来いよ」

「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」

「おう! そうしろ」

 私は立ち上がると、背伸びをした。

 肩が凝っているのがわかる。こんなに疲労を感じたのは久しぶり。

「ありがとう」ともう一度、一樹君に礼を言うと風呂場に向かった。

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