今夜、俺のトナリで眠りなよ
「変な女」と一樹君が呟くと、ごろりと私の横に倒れ込んでお腹を抱えて大笑いしだした。

「そんなに面白い?」

「だって……ひぃ」

 一樹君が引き笑いをして、枕をバシバシと叩く。

 相当、おかしいようで背中を丸めると全身をプルプルと震わせていた。

「あんた、馬鹿だろ」

「酷いっ!」

「この状況で、『処女なの。やめて』って。有り得ねえ」

 あはは、と一樹君が足をばたつかせた。

「それしか思いつかなかったのよ。馬鹿で悪かったわね」

 私は身体を起こすと、ベッドの隅に行ってずり落ちた肩紐を直した。

「馬鹿な女はモテるからいいんじゃねえの?」

 一樹君の言葉に、私の胸がチクリと痛む。

 馬鹿な女……なんて、言われたくないのに。

「もとはと言えば、一樹君がいけないのよ。どうしてこの部屋にいるのよ。ここは、私と優樹さんの……」

 私の言葉が途切れる。

 嫌な光景を思い出して、胸の奥が苦しくなった。
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