今夜、俺のトナリで眠りなよ
 私は「ごめん」と謝りながら、タオルを差し出した。

「悪い。気持ち悪いもん見せちまったな」

 一樹君が苦笑する。

 私は勢いよく首を左右に振った。

「違うの。私が勝手にドアを開けたから」

「まあ、そうだけど」と一樹君が、ケラケラと笑い声をあげた。

「もう! そこは優しく否定してよ」

「脱衣所に飛び込んできたくせに、何を言ってんだよ」

「ねえ、痛い?」

 一樹君が肩を竦めると、フッと口を緩めた。

「ガキの頃の傷だから」

「痛かった?」

「当たり前」

 一樹君が私にデコピンすると、「風呂に入るから」と脱衣所の戸を閉めた。

『もう開けんなよ』と明るい声が聞こえてくる。

「もう、開けませんよ!」と私が、笑いながら返した。
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