今夜、俺のトナリで眠りなよ
「社長、挨拶に……」

「ああ、わかってる」

 私は優樹さんの後ろをついて、歩き出した。

 妻として、笑顔でいろんな会社の人たちと挨拶をする。

 優樹さんも、秘書の谷島さんも、顔見知りの人たちとの会話のようで、和気あいあいとしているけれど。

 私には慣れない人たちばかり。何の話をしているのかわからないのに、ニコニコと笑顔を作っているのは意外と難しい。















「一樹のヤツ、なんだって今夜はまだ会場にいるんだ」

 トイレで化粧直しをして、会場に戻る途中で優樹さんの声がした。

 私は物陰に隠れると、声のしたように耳をすませて、視線を向けた。

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