今夜、俺のトナリで眠りなよ
 真っ赤なドレスの裾が見えた。あれは秘書の谷島さん?

 二人は身を寄せ合って、話をしている。この前、キスをしていたのは谷島さんだったのかな。

 優樹さんの愛人は、秘書の谷島さんなんだ。

『兄貴を家に帰って来させたいなら、色気のある下着を身につけて、胸元のあいた服でも着れば、一発だろ』

 以前、一樹君に言われた言葉を思い出して、私は嫌でも納得してしまう。

 谷島さんの胸のあいたドレスを思い出す。

 優樹さんは、ああいうのが好きなんだ。

「会社の重役たちばかりと話をしている。まるで……」

「考え過ぎよ」

 谷島さんの甘い声が聞こえてくる。

 さっき、優樹さんに耳打ちしているときの声とは別物だ。

 甘くて、優しくて……。二人は恋仲だと、すぐにわかってしまう。
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