今夜、俺のトナリで眠りなよ
「胸元が大きくあいてるドレスだなあって思って眺めていたの。優樹さんの愛人、秘書の谷島さんでしょ? あの人みたいに胸元がおおきくあいたドレスを着てみたら、私も……」

 肩に何かが触れた。直後、チュっと音がした。

 え?

「だーめ。胸なんか見せるなよ」

「か……一樹君?」

 今度はうなじが温かくなる。

 私、一樹君にキスされてる?

「谷間なんて見せなくていい。あんなドレス、着るなよ」

 一樹君が耳元で囁くと、スッと私から離れていった。

 熱い吐息が耳にかかって、すごく緊張した。

 しばらくしてから振り返ると、もう一樹君の姿は無くて、私はショーウィンドウに手をついて、ガクガクと震える膝を必死に止めようとする。

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