今夜、俺のトナリで眠りなよ
―一樹side―
「ふう」と煙を吐き出した。

 ホテルの正面玄関で、厚手のコートを羽織って、煙草をふかす。

「未成年なのに。いけないんだ」

 赤いドレスの女が、自動ドアをくぐり抜けると、明るい声で俺に話しかけてきた。

「確か。兄貴の秘書の……」

「谷島 美咲よ。何回、自己紹介したら覚えてくれるのかしら?」

「さあね。明日にはもう忘れるよ」

「ひどいなあ」

「兄貴とよろしくやってりゃあ、いいんだよ。あんたは」

「愛人だからって馬鹿にしてるでしょ?」

「そう思うなら、さっさと兄貴と結婚すりゃ良かったんだよ」
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