今夜、俺のトナリで眠りなよ
あの時は『マジでどうこうするつもりはない』って言っただけ」

「今は?」

 ちらっと一樹君が私を見る。

「それを聞いてどうするの? 困って、頭を悩ませるのは俺じゃなくて、桜子さんのほうだよ」

 それって……、本気ってこと?

「俺はいつでも愛人になる覚悟はできてるよ」

「そういう気持ちって普通、隠すものじゃない?」

「俺は愚弟だから」

 一樹君がくすくすと笑う。

「もしかして私をからかってる?」

「まさか。惚れた弱みで、俺をたくさん利用しなよ」

 一樹君が、ひらひらと手を振って私から離れて行った。

 利用なんて……できるはずないじゃない。

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