今夜、俺のトナリで眠りなよ
「ひどい……。何も知らないくせに」

 私はぎゅっと下唇を噛み締めた。

 私は頑張ってる。どうしてわかってくれないの?

 どうして私の努力を認めてくれないのよ。

 私は傍に崩れ落ちると、ほろりと涙が零れた。

「お父さんにはわからない。私の苦しみなんて……一生、わからないわ」

 私は、零れてくる涙を袖口でぬぐうと立ち上がった。

 夕食なんて、いらない。

 私は居間を飛び出すと、私の荷物がおいてある客間に閉じこもった。

 すぐにドアがノックされる。小さくて優しい音だ。

『桜子、何かあったの? 悩み事?』

 お母さんが、心配して来てくれたのだろう。

 私はたたまれている布団に寄りかかると、膝をかかえた。
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