今夜、俺のトナリで眠りなよ
 私が一方的に求めても、見返りは望めない。

 努力するだけ、私が辛くなるだけ。

「桜子、何を言っているの? 優樹さんは夫なのよ? 貴方が努力すれば……」

「もう努力したっ! 頑張った。でも無理なものは無理だった」

 私は、玄関へと足を向けた。

 嫌だ。こんなところに居たくない。実家なのに。安らげる場所なはずなのに。

 私には苦しいだけ。家に帰りたい。

「やっぱり帰る」

「桜子?」

「家に帰るの」

「電車、もう終わってるわよ?」

< 96 / 135 >

この作品をシェア

pagetop