今夜、俺のトナリで眠りなよ
 私は夫に愛を求めたい。けど、優樹さんは私に愛を求めてない。

 こんな夫婦、最初から成り立つわけないのよ。

 私は鞄を持ったまま、客間の戸を開けた。

 お母さんが、困った表情で立っている。

「優樹さんは、戸惑ってなんていない。私を愛してないし、愛そうともしてない。それが現実。これからも、ずっと優樹さんは私を愛さない」

 私ははっきりした口調で、お母さんに言いきった。

 本当にそうだから。

 もっと早くに気付けば良かった。一樹君の言うとおり。

 私が努力すれば、優樹さんも変わってくれるって思ってた。

 帰りたいって思う家を作れば、自然と家に足が向くって信じてた。

 でも違う。私と優樹さんの求める夫婦像が違い過ぎる。

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