ヘタレ王子とヤンキー姫
事件がおこったのは、夏休みが明けてからだった。

クラスメートの一人が、財布がなくなったと叫びだしたのだ。

誰かに盗られたと叫ぶその生徒を見て、教師はなんの迷いもなく、前垣廉を呼んだ。

「何だよゴリラ。」

「鞄を見せろ。」

「あっ?俺じゃねぇよ。ふざけんなよお前。」

「自分じゃないなら、見せられるだろ。」

「じゃぁ他のやつのも見ろよ」
「お前の鞄に入ってなかったらな。」

廉は、鞄の中身を散らばした。

その瞬間、騒いでいた生徒が、“俺の財布”と叫んだ。

何度も知らないと訴える、廉の話しなど聞いてもらえず、彼は自宅謹慎を言い渡された。

颯太は疑問に思った。

廉は休憩時間は教室にはいないし、財布が盗まれたのは、体育の時間。

その時なら、教室には誰もいないからだ。

それに何より、鞄から財布が見つかったとき、彼は本気で驚いていた。

確かに、問題児ではあるけれど、卑怯な真似は絶対しない。

だから颯太は、徹底的に調べることにした。
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