ヘタレ王子とヤンキー姫
家の前で大きくため息をついて、扉を開けた。

「お節介なんだよな…あいつら」

呟いて颯太は少し笑った。

隠していたつもりだったけど、樺音も恵美も気付いていたんだと、知った。

どうせなら両親が揃ったときに話したいと考えた颯太は、父親が帰ってきてから話すことにして、そのまま自分の部屋に入っていった。

後ろから追いかけるように聞こえた、母親の声に昨日までは全く感じなかった罪悪感を感じながら。

「母さん、ずっとあんな悲しそうに俺を呼んでたんだな。」

「悲しいよ。自分の大切な人に無視されるのは。」

恵美には電話で簡潔に事情を話した。

電話の向こうでは、恵美が樺音と春樹に、説明をしていた。

「なぁスピーカーにしてくんない?面と向かって言うのは恥ずかしいけど、伝えたいことがあるんだ。」

「分かった…いいよ。」

「俺さあのときのこと、すげぇムカついてたけど、よかったこともある。この高校に入ったことだ。あれがなかったら、俺はここにいなかったし、お前らにも会えなかった。だから、プラマイ0ってやつ?ありがとな」

誰もなにも言わなかった。

「おいなんか言えよ。」

「樺音と春樹なら声殺して笑ってるよ。」

「ふざけんなよ。」

そういいながら颯太も笑っていた。

「そろそろおやじ帰ってくるからいくわ。」

「頑張って。」

颯太は電話を切った。
< 54 / 200 >

この作品をシェア

pagetop