ふわふわ
 雪は、見ている分にはきれいだけれど、中との温度差に、思わず身震いした。

 そうしたら、彼が黙って肩を抱いてくれた。
 私は彼の腰に手を廻して、彼の右手に自分の右手を重ねた。
 暖かい手。

「のりちゃん、手、冷たいね」
 と言って、ぎゅ、っと握ってくれた。ドキドキした。
 どこへ行こうか、とも言わないで、雪の降る中をただ歩いた。彼が、「帰ろう」って言ったらどうしよう、と思うと怖くて、何も言えなかった。

 薄暗い、人通りの少ない路地で、ふいに立ち止まった。
 どうしたの? って聞く暇もなかった。

 私のまつげに雪が落ちたって言って、彼がこちらに顔を近づけた。

 そしてキス。
 最初から深いキスだった。寒さなんか吹き飛んでしまうほどの。でも、どこか、夢の続きみたいな、ふわふわ浮かんでいる気分の。

「雪宿り、しない?」
 と言ったのは彼。たぶん言わせたのは私。
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