会いたい

「こうして聞いてみると、やっぱりお医者様って大変なんですね。私には絶対無理です。根気とか、根性とか、ないから」

「確かに我慢強いのには自信ありますよ。でも、そのせいか、あんまりいいことないですね。暇もないし。あ、暇がないといえば、学校の先生だって暇がないでしょ? 友達に高校教師してる奴いるんですけど、平日は帰るの9時過ぎだって言うし、土日も部活で休めないって聞いてます」

 話題を向けられて、今度は私が話す番だった。
 私も、自分が今勤めている中学校のことや、授業のこと、生徒のことなど話してもいい範囲でのことを簡単に説明した。
 時々、そこに相槌や質問が入るので、一方的ではない会話が続く。

 高木さんは優しい。透と同じように。
 高木さんはいい人だ。透とは違うけれど。
 私は久々に生きている人と楽しく過ごしていた。でも。
 それなのに何故、私は今すぐにでも帰りたいと思っているのだろうか。
 こんなに楽しいはずなのに、何故私はこの人を透と比べて見ているのだろうか。

 視界の隅の壁掛時計の針が、やけに速く動いている――

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