会いたい


 放課後の合唱部の活動が終わり、生徒が音楽室からいなくなると、私は戸締りを確認するために音楽準備室に入った。
 3階の窓だから、もし鍵があいていても泥棒が入る心配はないが、習慣に従い、チェックする。
 音楽室は生徒玄関の真上だ。外灯の明かりに照らされ、生徒たちが家路を急ぐのを眼下に、思わず笑みがもれた。
 音楽専科の私には、現在の職場はとても居心地がいい。 
 中規模校のため、音楽教師は講師である私しかいないが、全学年の音楽を担当しても空き時間がかなりある。合唱部顧問も担当しているが、文科系の部活は数も所属する部員も少なく、合唱部もその例にもれず15人ほどの細々とした活動だった。
 文化祭の発表に向けての新曲の練習と、夏の合唱コンクールで歌った課題曲と自由曲のおさらいを繰り返す日々。
 15人の弱小合唱部だが、幸いにも歌好きの真面目な子ばかりが入ってくれているおかげで、トラブルもなく、楽しい活動ができている。

 
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