ありのままの、あなたが欲しい。
おとなしく止まっていた蛾には申し訳ないが、ティッシュで一思いに仕留めてやった。



「とれた?とれた?」


「とれましたよ。ほら」


「キャー!!見せなくていいからっ!!」



こんなに焦ってる藤咲さんは初めて見た…おもしろい。


嫌がるママをからかう俺を見てケラケラと無邪気に笑うマナトくん。


なんとも平和な朝だった。




“困ったことがあったら協力する”と言ったあの日以来、藤咲さんは本当に俺に色々な頼み事をしてくる。


それはもう朝っぱらから『醤油なくなっちゃったから貸して!』だの、

『店長から野菜もらったんだけど、食べ切れないからきゅうり10本あげるわ』だの…。


それはまさに古きよき時代の隣人のようだ。


< 148 / 395 >

この作品をシェア

pagetop