ありのままの、あなたが欲しい。
藤咲家の墓石に彫られた秋(シュウ)の名前。


侘しい気持ちを抱きながら、タオルで丁寧にその名前を拭く。



私が墓石の掃除をしている間も、愛斗は雪だるまに枝葉で目や手を付けて遊んでいた。


愛斗は雪が好きだったあなたに似たのかもね。



──でも私は嫌い。


雪は綺麗な姿とは裏腹に、とても恐ろしいモノだから。


私から、
あなたを奪ったモノだから──…





「これあげるー」



掃除も終わり花を供えたお墓に、ちぐはぐに飾り付けられた雪だるまを愛斗がちょこんと置いた。


その小さな優しさに、心が一瞬で暖かくなっていく。


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