ありのままの、あなたが欲しい。
どうして亜優が悔しいと思うのか、それもよくわからなかったけれど、
それ以上に夏芽さんが男と会っていたということの方が気になる。



「…やっぱり知らないの?
この間の日曜日、子供さんを連れて年上っぽい男の人と会ってたんだよ」



まさか、マナトくんの父親……?

考えられるのは彼しかいない。


何で会ったりしたんだよ…!?


動揺を隠せない俺に亜優はそっと近付いて、シャツの裾をキュッと握る。



「ねぇ叶…、お互いに秘密にしてることがあったのに、本当に藤咲さんとうまくやっていけると思ってるの?」



そんな心を揺らがせるような問い掛けは聞きたくないのに、小悪魔の囁きはスッと耳に入ってくる。


そして、亜優はその細い腕を俺の背中に回して胸に顔を埋めてきた。


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